X線方式の非接触厚さ計は、対象物にX線を照射し、その透過量から厚さを算出する測定方式です。素材に触れず、透明・黒色・金属など多様な材質にも対応可能で、高速ライン上でもμm単位の厚さ測定が行えます。
本記事では、X線方式の非接触厚さ計の仕組みや特徴、活用されている業界について解説します。
放射線にはさまざまな種類がありますが、厚さ計に用いられる場合は、人工的に発生させた放射線の一種である「X線」の利用が主流です。
放射線(X線)方式では、X線源と検出器を素材の上下に配置する「透過型」が一般的で、搬送ラインを止めることなく、製品を通過させながら連続的に厚さを測定できます。
μm単位の厚さ変化も検出できる精度を備えており、黒色フィルムや多層シート、金属箔など光学式では測定が難しい素材にも対応可能です。高速生産ラインに組み込んだ品質管理用途にも適しており、非接触かつリアルタイムな厚さ監視が求められる現場で活用されています。
対象物にX線を当て、X線がどれだけ通り抜けたか(透過の強さ)をもとに厚さを計算する方式です。厚さのある物体ほどX線は弱くなるため、入る前の強さ(入射強度)と出てきた後の強さ(透過強度)の比率から厚さを判断します。
具体的には、検出器が受け取ったX線の信号を電気信号に変換し、あらかじめ設定された基準と比べて厚さを割り出します。
X線方式には、±0.1μmオーダーの微細な厚さ変動を非接触で検出する能力があります。測定対象に触れずに済むため、柔軟な素材や高速搬送中のラインでもリアルタイムで安定した測定が可能です。機械的接触による振動や変形の影響を受けにくいため、品質制御の厳しい工程にも適しています。
光学的手法とは異なり、X線は対象物の色や表面状態に影響されにくいという特徴があります。可視光や赤外線では測定が困難な黒色フィルムや顔料入りの散乱体、多層構造の積層体などでも、安定した厚さ測定が可能です。
特に面密度の測定と相性が良く、重量管理にも応用されています。素材の密度が均一であれば、面密度は厚さに比例するからです。この特徴を活かし、塗工量やめっき厚のように、直接厚さを測るのが難しい対象を「単位面積あたりの重さ」として管理できます。
導入の際には、使用環境に応じた法令遵守と安全対策が求められます。装置によっては作業主任者の選任や管理区域の設定が必要になるケースもありますが、最近では低出力のX線管を採用し、主任者や区域設定が不要な設計の機種も普及しています。使用にあたっては、装置構造や線源の種類、安全マニュアルの内容を事前に確認することが重要です。
X線方式の非接触厚さ計は、対象物の色や表面状態に影響されにくく、高速・高精度で厚さを測定できる特徴から、さまざまな業界の生産現場で採用されています。代表的な用途は以下の通りです。
たとえば、電池材料では電極塗布量のリアルタイム管理に活用され、黒色の活物質層や炭素系添加剤を含む膜厚でも安定した測定が行えます。
また、金属箔やセラミックシートなど、光学式での測定が難しい材料にも対応し、フィルム・シート・ロール材を扱う現場での導入が進んでいます。方式ごとに対応できる素材や構造に差があるため、測定対象に応じてX線方式を選択することが重要です。
※画像引用元:ナノグレイ公式HP
(https://www.nanogray.co.jp/products/SX.html)
SX-1100は、X線とシンチレーション検出器を用いた非接触厚さ計です。黒色フィルムや散乱性フィルム、金属箔など、素材特性に依存しやすい対象にも安定した厚さ測定が可能。高速ラインや振動のある環境でも使用でき、連続生産の品質管理に対応します。
※画像引用元:ヒューテック公式HP
(https://www.futec.co.jp/news/news/8197.html)
プラスチックフィルムや金属箔などの薄い素材に対応し、μm単位の測定値をリアルタイムで表示します。低出力X線を採用しているため、管理区域の設定や専任者は不要。研究開発や品質管理の現場など、多品種小ロットの測定に適しています。
X線方式の非接触厚さ計は、測定が難しい素材にも対応できる点で優位性がありますが、すべての用途に適しているわけではありません。導入検討時には、他方式との特性比較が重要です。
レーザー方式は、静止物や部品の高精度測定に適しており、±1μm以下の測定が可能な機種も存在します。ただし、黒色フィルムや粗面では反射光が不安定になり、測定誤差が生じやすい傾向があります。
赤外線方式は、多層フィルムの層別厚さ測定に強みを持ち、分子構造に応じた吸収波長を用いることで特定層の厚さを個別に評価できます。ただし、金属や赤外線を透過しない素材には不向きです。
超音波方式は、金属などの厚板測定に用いられます。EMATやレーザー超音波により非接触測定も技術的に可能ですが、対象材の導電性や環境条件に制限があります。
一方、X線方式は色・光沢・反射性に影響されにくく、リアルタイムかつ非接触で測定可能という特徴がありますが、装置の遮蔽設計や放射線管理の有無といった安全面の配慮が必要です。用途・環境・対象素材に応じて、最適な方式の選定が求められます。
非接触厚さ計といっても、計測対象や求める精度によって適した方式は異なります。導入成果の最大化には、使用環境に合った製品選びが重要です。
このサイトでは、「連続生産されるシート材を安定して測定したい」「材質ごとの反射率に左右されず測定したい」「多層構造の膜厚を正確に評価したい」といった計測の対象と目的に応じて選べる非接触厚さ計3選を紹介しています。
特徴や対応方式を比較しながら、自社に合ったモデル選びのヒントとしてご活用ください。
X線方式の厚さ計は、可視光や赤外線では測定が難しい黒色フィルムや散乱体、多層構造材などに対応できる方式です。高速搬送中でも対象に触れず、μm単位の厚さを安定して測定できるため、リアルタイムで品質を監視したい連続生産ラインで導入が進んでいます。
X線方式は放射線を使うため、導入時には遮蔽設計や法令対応といった安全面の確認が欠かせません。近年は管理区域外でも使える低出力タイプも登場しており、必要な精度と安全要件を両立できるかが選定のポイントになります。
測定対象や設置環境に応じて、構造や線源の仕様をしっかり比較することが重要です。
本サイトでは、用途や素材を考慮したうえで非接触厚さ計を比較しています。厚さを計測する対象別におすすめの方式が知りたい方は、選定時の手がかりとしてぜひご活用ください。
非接触厚さ計は、計測対象となる材料や厚み・範囲、用途に合ったタイプを選ぶことが大切です。
ここでは、計測対象別に適した非接触厚さ計3製品を
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