赤外線方式の非接触厚さ計とは

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赤外線方式の非接触厚さ計は、赤外線の吸収特性を利用して素材の厚さを測定する方式です。対象の分子構造に応じた波長を用いることで、多層構造や樹脂コーティング層の厚さを非接触で把握できます。

本記事では、赤外線方式の特徴や測定原理、活用されている業界、製品についてご紹介します。

赤外線方式の非接触厚さ計とは

特定の物質に対して赤外線の照射を行い、赤外線の吸収・反射・透過などの光学特性の変化を活用して測定を行う厚さ計です。

透過や反射した光の強さをセンサで読み取ることで、素材に触れず、壊すことなく厚さを測定できます。多層構造や成分ごとの厚さ差を把握できるため、ラミネートや機能性フィルムなどの層別管理に向いています。

赤外線方式の測定の原理と特徴

測定原理

赤外線方式の厚さ計は、素材に赤外線を照射し、透過・反射・吸収といった光のふるまいの変化を測定することで厚さを算出する方式です。

素材には、分子構造に応じて特定の波長に反応する特性があります。赤外線を照射したときに、どれだけの光が吸収・透過・反射されたかをセンサで検出し、その結果をあらかじめ登録された基準データ(検量線)と比較して厚さに換算します。

使用する赤外線の波長を切り替えることで、多層構造の中から特定の層だけを選んで測定することも可能です。

主な特徴

 

非接触で多層構造の測定に対応

非接触・非破壊で素材の層ごとの厚さを測定できます。素材に応じて吸収波長を切り替えることで、多層フィルム中のEVOH層やナイロン層などを個別に測定することが可能です。

特定層の厚さばらつきを把握できるため、積層材の品質管理に役立ちます。

吸収特性がある素材に限定される

対象物が赤外線を吸収することが前提となるため、金属箔のように赤外線を透過・吸収しない素材には適用できません。

また、素材が薄すぎる場合や、吸収帯が検出波長域にない場合も測定は困難です。赤外線方式を採用する場合は、対象の赤外線吸収スペクトルに合わせた波長選定が必要です。

周囲環境の影響を受けやすい

赤外線は周囲の温度や外光の影響を受けやすく、測定精度に影響を及ぼす場合があります。高温環境下では、センサと試料が放射する赤外線が干渉するため、安定運用のためには冷却対策や光学窓の清掃などが必要です。

複数波長での比率測定によって、一部の外乱要因を補正できる厚さ計も存在します。

活用されている業界・用途

赤外線方式の非接触厚さ計は、多層構造や機能性材料の一部層だけを狙って厚さを測定できる特徴から、食品・医療・エネルギー分野などで広く活用されています。たとえば、以下の素材・製品が挙げられます。

     
  • 食品・医療用の多層フィルム
  •  
  • ラミネート材やコーティング層の厚さ測定
  •  
  • リチウム電池の多層電極フィルム
  •  
  • 構成材料の一部層だけを測定したい製品

食品包装材では、バリア性を持つEVOH層の厚さを赤外線で個別にモニタリングすることで、保存性や耐久性の管理が可能です。医療用途では、PE・ナイロンなどの多層構造フィルムに対して、非接触かつリアルタイムで層厚を確認できるため、品質の一貫性維持に寄与します。

リチウム電池製造の分野では、電極の活物質層やバインダ層など、機能性材料の均一性確認に有用です。

いずれも単なる「全体厚さ」ではなく、「特定層の厚さ」が重要な工程で採用されています。

赤外線方式の厚さ計の製品例

IRMT01(チノー)

IRMT01 製品画像

※画像引用元:チノー公式HP
(https://www.chino.co.jp/jp/serv/products/detail/?did=93)

赤外線3波長と、特に高精度を求められる膜厚測定「P偏光正反射方式」を組み合わせた非接触厚さ計です。10μm以下の極薄膜や多層ラミネート中の各層厚さを、リアルタイムで高精度に測定できます。応答速度28msの高速測定に対応し、透明フィルムや塗工膜などの連続監視に適しています。

RX-2000シリーズ(クラボウ)

RX-2000シリーズ 製品画像

※画像引用元:クラボウ公式HP
(https://www.kurabo.co.jp/el/ir/thickness/products/laminate.html)

透明フィルムだけでなく、金属蒸着フィルムや接着剤コート層の厚さも測定可能で、多層構造のラミネート製品の厚さ管理に対応します。インラインでの幅方向分布の自動測定も可能です。

他方式との比較・検討ポイント

レーザー方式は、素材表面の反射を利用して上下センサ間の距離差から厚さを算出します。μm単位の寸法測定が得意で、反射性の高い金属や成形品の寸法検査に向いていますが、層別測定は困難です。

X線方式は、透過性に基づいて素材の平均厚や面密度を測定するため、色や反射率に左右されにくく、黒色材や散乱体にも対応可能です。一方で放射線管理が必要になる場合があります。

超音波方式は、非破壊で内部の厚さを測定可能ですが、主流は接触型。リアルタイムによる多層フィルム検査には不向きなことがあります。

赤外線方式は、透明フィルムや機能性材料の「層別厚さ」に関する情報を得たい場合に特に有効です。ただし、吸収帯がない素材には適さず、測定環境の制御も求められるため、導入前の条件確認が不可欠です。

赤外線方式は、透明フィルムや多層構造の中でも、特定の層を分離して測定したい場合に適しています。一方で、赤外線を吸収しない素材(金属や黒色フィルムなど)は測定が困難です。測定対象が金属箔・黒色材・粉体を含む散乱体・面密度管理などである場合は、X線方式のように光学特性に左右されにくい方式が向いています。

赤外線方式を選ぶべき現場と
判断ポイント

 

非接触厚さ計といっても、計測対象や求める精度によって適した方式は異なります。導入成果の最大化には、使用環境に合った製品選びが重要です。
このサイトでは、「連続生産されるシート材を安定して測定したい」「材質ごとの反射率に左右されず測定したい」「多層構造の膜厚を正確に評価したい」といった計測の対象と目的に応じて選べる非接触厚さ計3選を紹介しています。
特徴や対応方式を比較しながら、自社に合ったモデル選びのヒントとしてご活用ください。

 

多層構造の厚さを
把握したい現場に

赤外線方式は、素材ごとの赤外線吸収特性を利用して、構造の中から特定の層だけを非接触で測定できる方式です。食品包装材のバリア層、医療用フィルムのナイロン層、リチウム電池電極のバインダ層など、「層単位」で品質を管理したい工程で活用されています。全体厚ではなく、「ある層の厚みだけ」を見極めたいというニーズに適しています。

赤外線方式の厚さ計を
選ぶ際のポイント

素材が赤外線を吸収する・
測定環境が安定している

赤外線方式では、測定対象が特定の波長を吸収する性質を持っていることが前提です。金属のように赤外線を透過・吸収しない素材は対象外となります。

また、赤外線は温度や外光といった環境の影響を受けやすいため、安定した測定には環境制御が必要です。装置選定時には、素材の物性と測定場所の条件を事前に確認し、「全体厚を測るべきか、層別に見るべきか」という視点で方式を判断することが重要です。

非接触厚さ計といっても、計測対象や求める精度によって適した方式は異なります。導入成果の最大化には、使用環境に合った製品選びが重要です。
このサイトでは、「連続生産されるシート材を安定して測定したい」「材質ごとの反射率に左右されず測定したい」「多層構造の膜厚を正確に評価したい」といった計測の対象と目的に応じて選べる非接触厚さ計3選を紹介しています。
特徴や対応方式を比較しながら、自社に合ったモデル選びのヒントとしてご活用ください。

 
【計測対象別】
非接触厚さ計3選

非接触厚さ計は、計測対象となる材料や厚み・範囲、用途に合ったタイプを選ぶことが大切です。
ここでは、計測対象別に適した非接触厚さ計3製品を
紹介していきます。

連続生産ラインの
薄物シート材なら
『SX-1100』
ナノグレイ
  • 放射線式

    X線やβ線を素材に照射し、透過した放射線量から厚さを算出。
    振動や素材の色に影響されず、安定した非接触測定が可能。

    【こんな用途におすすめ】

    材質が透明・半透明(フィルム、ガラス)、黒色・光沢のあるものを計測したい。
    高速搬送や振動がある連続ラインで、薄物シートのリアルタイム監視を行いたい。

    放射線式
放射線式
揺れ・素材に強い
汎用型モデル
  • 物質を透過し測定するX線式を採用しているため、黒色材、散乱体など素材を選ばず「透過測定」が可能
  • 高感度・高速応答の放射線検出方法「シンチレーション検出器」採用で、金属箔など薄物の搬送系での精度±0.1μmを実現
搬送で揺れのない
厚物シート材なら
『thicknessGAUGE C.LL』
Micro-EpsilonJapan
  • レーザー式

    上下のレーザー変位センサで表面距離を測定し、その差から厚さを算出。
    非接触でμm単位の高精度測定が可能。

    【こんな用途におすすめ】

    金属・薄いプラスチックで放射線を避けたい。
    静止または揺れの少ない搬送環境で正確に測りたい。

    レーザー式
レーザー式
剛体向け
高精度モデル
  • 揺れのない対象物に精度の高い計測ができる「三角測量方式」を採用し、システム
    精度±1/±5μmを実現
  • 金属・木材・プラスチックなど、一般的な工業材料に対応し、材質ごとの反射率の違いに左右されにくい安定した測定ができる
化学組成の異なる
多層フィルムなら
『赤外線極薄厚さ計IRMT01』
チノー
  • 赤外線式

    素材が特定波長の赤外線を吸収する性質を利用し、層ごとの厚みを測定。
    多層フィルムの非破壊・非接触測定に向いている。

    【こんな用途におすすめ】

    コーティング膜や電池電極など多層を見分けたい。
    極薄膜をリアルタイムでモニタリングしたい。

    赤外線式
赤外線式
薄膜対応の
層別測定特化モデル
  • 表面反射を除去して精度を高める「P偏光正反射方式」により、異なる化学組成の層を識別しやすい
  • 10µm以下の極薄膜に対応し、28msの高速更新周期でインライン厚み管理が可能。リアルタイムに変化を把握でき、工程調整や不良発生を抑制