多層フィルムの厚さ測定方法

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多層フィルムの厚さ測定では、フィルム全体の厚さ(全厚)を測りたいのか、各層の厚さを分けて測りたいのかによって、適した測定方法が異なります。

この記事では、全厚測定と層別測定の違いを整理し、断面観察・分光干渉方式・赤外線方式・放射線式などの特徴と、フィルムの構成に応じた測定方法の選び方を解説します。

全厚測定と層別測定の違い

多層フィルムは、複数の樹脂層や接着層、バリア層、金属蒸着層などを組み合わせたフィルムです。厚さ測定では、管理したい対象がフィルム全体なのか、特定の層なのかを明確にすることが重要です。

全厚測定

全厚測定は、フィルム全体の厚さを測定する方法です。製品の寸法管理や、幅方向・流れ方向における厚さのばらつきの把握などに用いられます。

製造工程では、厚さに加えて、単位面積当たりの質量を示す坪量(面密度)を管理する場合もあります。ただし、厚さと坪量は異なる物理量です。坪量から厚さを評価するには、材質や密度、層構成などを考慮する必要があります。

層別測定

層別測定は、多層フィルムを構成する各層、または特定の層の厚さを評価する方法です。食品包装用フィルムのバリア層や接着層など、特定の層の厚さが製品性能に関わる場合に検討されます。

ただし、各層の材質や光学特性によって測定できる範囲は異なります。すべての層を同じ方法で個別に測定できるとは限らないため、対象となる層の材質や厚さ、層構成に応じて測定方法を選ぶ必要があります。

比較項目 全厚測定 層別測定
測定対象 フィルム全体の厚さ 各層・特定の層の厚さ
主な目的 製品寸法の管理、厚さムラの把握 機能層の品質管理、層構成の評価
主な測定方法 接触式、レーザー式、放射線式など 断面観察、分光干渉方式、赤外線方式など

多層フィルムの主な測定方法

多層フィルムの測定方法には、断面を観察する方法や、光の干渉・吸収特性、放射線の透過特性などを利用する方法があります。測定原理や適用条件が異なるため、測定目的とフィルムの構成に合わせて選定します。

断面観察

フィルムを切り出して断面を作製し、光学顕微鏡や電子顕微鏡などで各層の厚さを評価する方法です。層構成や各層の厚さを直接観察できるため、研究開発や品質評価、不具合解析などに用いられます。

必要に応じて、FT-IR(フーリエ変換赤外分光分析)などで各層の材質を分析することもあります。断面観察は厚さや層構造の評価、FT-IRは材質の同定などを目的とする分析です。

試料の切り出しや断面作製が必要なため、生産ラインで連続的に測定する用途には向きません。

分光干渉方式

分光干渉方式は、フィルムの表面や層の境界などで反射した光の干渉を利用し、光学的な情報から厚さを求める方式です。透明な多層フィルムでは、層の境界から得られる干渉情報を解析することで、特定の層の厚さを評価できる場合があります。

試料を切断せず、非接触で測定できる装置もあります。ただし、測定可否は各層の透明性、屈折率、層間の光学的な違い、表面状態、装置の解析方式などによって異なります。光が内部まで届きにくい試料や、金属蒸着層などを含む構成では、内部の層を測定できない場合があります。

赤外線方式

赤外線方式は、物質ごとに異なる赤外線の吸収特性を利用する方法です。測定対象の層が特定の波長の赤外線を吸収する場合、吸収量などから厚さを評価できることがあります。

対象の材質に応じて測定波長や条件を設定し、検量線などを用いて厚さを算出します。特定の層に識別可能な吸収特性があれば、層別測定の候補になります。生産ラインでの連続測定に対応した装置もあります。

ただし、測定可否や精度は、対象層の材質・厚さや、他の層による吸収の影響などに左右されます。すべての樹脂層や多層構成に適用できるわけではないため、装置の仕様を確認する必要があります。

放射線式(X線・β線)

放射線式は、フィルムにX線やβ線などを透過させ、透過前後の放射線量の変化から、面密度などを評価する方式です。対象物の材質や密度、放射線のエネルギー、校正条件などに応じて、厚さや坪量の管理に利用されます。

光の反射や透過を利用する方式とは異なり、フィルムの色や光学的な透明性の影響を受けにくいことが特徴です。黒色層などを含むフィルムでも、測定条件が適合すれば全体の厚さや面密度の管理に利用できます。

ただし、金属層を含む場合などは、材質や層構成によって放射線の透過・減衰が変化します。対象フィルムに対する測定感度や校正条件の確認が必要です。また、各層の厚さを直接分離して測定する方式ではありません。

レーザー式

レーザー式では、レーザー変位センサなどでフィルム表面の位置を測定し、装置の構成に応じて表面間の位置関係から厚さを算出します。非接触で測定できるため、全厚の測定方法として検討されます。

一方、反射特性や透明性、表面状態などによって表面位置の検出が難しくなる場合があります。また、搬送中のフィルムのバタつきや振動が測定値に影響することもあるため、設置条件や搬送環境を考慮して選定することが重要です。

測定方法の選び方

多層フィルムの測定方法は、管理目的とフィルムの層構成を基準に選びます。以下は一般的な目安であり、実際の測定可否は材質や厚さ、装置仕様によって異なります。

測定目的 主な候補 確認する条件
フィルム全体の厚さ レーザー式、放射線式など 材質、測定範囲、搬送条件
透明な多層フィルムの各層 分光干渉方式など 透明性、層間の光学特性
特定の樹脂層の厚さ 赤外線方式など 対象層の吸収特性、他の層の影響
各層の厚さ・材質の詳しい分析 断面観察、必要に応じた分光分析 断面作製方法、材質同定の必要性

生産ラインで連続測定する場合は、測定速度や必要精度に加え、フィルムの揺れや装置の設置条件も確認しましょう。方式を絞り込んだ後は、実際のフィルムサンプルを用いて測定テストを行い、必要な精度や再現性が得られるかを確認することが重要です。

まとめ

多層フィルムの厚さ測定では、フィルム全体の厚さを管理するのか、各層や特定の層の厚さを評価するのかによって、適した測定方法が異なります。

全厚の管理ではレーザー式や放射線式など、層別測定では断面観察・分光干渉方式・赤外線方式などが候補になります。ただし、測定できる層や厚さの範囲は、フィルムの材質・層構成・装置仕様によって異なります。自社の管理目的と生産条件を整理し、対応する非接触厚さ計を比較検討しましょう。

【計測対象別】
非接触厚さ計3選

非接触厚さ計は、計測対象となる材料や厚み・範囲、用途に合ったタイプを選ぶことが大切です。
ここでは、計測対象別に適した非接触厚さ計3製品を
紹介していきます。

連続生産ラインの
薄物シート材なら
『SX-1100』
ナノグレイ
  • 放射線式

    X線やβ線を素材に照射し、透過した放射線量から厚さを算出。
    振動や素材の色に影響されず、安定した非接触測定が可能。

    【こんな用途におすすめ】

    材質が透明・半透明(フィルム、ガラス)、黒色・光沢のあるものを計測したい。
    高速搬送や振動がある連続ラインで、薄物シートのリアルタイム監視を行いたい。

    放射線式
放射線式
揺れ・素材に強い
汎用型モデル
  • 物質を透過し測定するX線式を採用しているため、黒色材、散乱体など素材を選ばず「透過測定」が可能
  • 高感度・高速応答の放射線検出方法「シンチレーション検出器」採用で、金属箔など薄物の搬送系での精度±0.1μmを実現
搬送で揺れのない
厚物シート材なら
『thicknessGAUGE C.LL』
Micro-EpsilonJapan
  • レーザー式

    上下のレーザー変位センサで表面距離を測定し、その差から厚さを算出。
    非接触でμm単位の高精度測定が可能。

    【こんな用途におすすめ】

    金属・薄いプラスチックで放射線を避けたい。
    静止または揺れの少ない搬送環境で正確に測りたい。

    レーザー式
レーザー式
剛体向け
高精度モデル
  • 揺れのない対象物に精度の高い計測ができる「三角測量方式」を採用し、システム
    精度±1/±5μmを実現
  • 金属・木材・プラスチックなど、一般的な工業材料に対応し、材質ごとの反射率の違いに左右されにくい安定した測定ができる
化学組成の異なる
多層フィルムなら
『赤外線極薄厚さ計IRMT01』
チノー
  • 赤外線式

    素材が特定波長の赤外線を吸収する性質を利用し、層ごとの厚みを測定。
    多層フィルムの非破壊・非接触測定に向いている。

    【こんな用途におすすめ】

    コーティング膜や電池電極など多層を見分けたい。
    極薄膜をリアルタイムでモニタリングしたい。

    赤外線式
赤外線式
薄膜対応の
層別測定特化モデル
  • 表面反射を除去して精度を高める「P偏光正反射方式」により、異なる化学組成の層を識別しやすい
  • 10µm以下の極薄膜に対応し、28msの高速更新周期でインライン厚み管理が可能。リアルタイムに変化を把握でき、工程調整や不良発生を抑制